医者のイラスト 「食事で抗酸化物質を摂取する」「生活習慣を改善して酸化を促進する外部要因を排除・除去する」、この2つの方法で抗酸化力を強めるアンチエイジングを “アンチエイジングのための2つの抗酸化力強化法“ では紹介しました。

今回は、さらにもう1つのアンチエイジング法を紹介します。漢方薬でのアンチエイジングです。

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漢方医学視点での老化の原因は「五臓」の機能低下

漢方医学では老化の原因をそれぞれ関連性のある「五臓」の機能低下と考えます。
「五臓」のなかでもとくに、「腎」の機能低下が老化現象に大きく関わっていると言われています。

また、漢方医学では「心」を精神・意識・思考活動を司る脳のような働きをしていると捉えています。
「心」は「腎」をコントロールしているため、「心」の機能低下も老化現象を促進します。

老化の原因の「五臓」とは?

漢方医学での「五臓」とは、解剖学的な意味合いよりも人体の働きや機能を5つ(心、腎肝、脾、肺)に分類したものです。
「五臓」は独立した臓器ではなくお互いに助け、あるいはお互いに抑制しています。つまり、老化においても「五臓」は関連性を持っていると考えられています。

「五臓」それぞれの機能・役割については、“「証」を特定する3つ要素 ~「気・血・水」「六病位」「五臓」について~”で解説しています。ご参照ください。

「五臓」の機能低下でおきる老化現象

「心」:中枢神経・循環器系を司る

もの忘れが激しくなる、理解力低下、頭がフラフラする・めまい、眠りが浅い・夢をよく見る、動悸・息切れ、舌先のしびれ、腰痛、骨粗しょう症

「腎」:生命エネルギー・泌尿生殖器系を司る

からだが冷えやすくなる、体力の低下・足腰が弱くなる、耳鳴り・耳が遠くなる、老眼・白内障、白髪・脱毛、頻尿・尿もれ、性欲減退

「肝」:内分泌・代謝・自律神経系を司る

精神的に不安定になる、怒りっぽくなる、イライラする、不眠、視力低下・眼精疲労

「脾」:消化器系を司る

胃腸機能の低下、食欲不振、下痢

「肺」:呼吸器系を司る

呼吸器機能の低下、鼻や皮膚などの異常、かぜをひきやすい、息切れ、汗が出やすい

アンチエイジング対策で優先される「腎虚」の改善とは?

「五臓」のうち最も老化に影響を与えるのが「腎」です。「腎」は先天的な生命力・生命エネルギーを意味し、成長・発育・生殖をコントロールする役割を持っています。

年齢を重ねて「腎」の機能が低下することを「腎虚」と呼びます。「腎虚」になると老化の典型的な症状が現れます。
からだが冷えやすくなる、体力の低下・足腰が弱くなる、耳鳴り・耳が遠くなる、老眼・白内障、白髪・脱毛、頻尿・尿もれ、性欲減退、栄養不足、肌の乾燥・かゆみなど。

そのため、漢方薬でのアンチエイジング対策では、まず「腎虚」を改善し老化速度を抑制することが優先されます。
老化現象を「腎虚」として包括的に捉えることで、1つの漢方薬で複数の老化現象に効果が期待できることもメリットです。

アンチエイジングに効果がある漢方薬について

漢方薬のイラストアンチエイジングに効果がある漢方薬を、漢方専門医の診断で患者様の「証」にあわせて処方します。

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「腎虚」を改善してアンチエイジングに効果のある漢方薬

「腎」の力を強めて「腎虚」を改善する漢方薬です。慢性的な症状に対して効果が期待できる3つの漢方薬を紹介します。

六味丸:「腎」の機能を高める効果

体がほてる、のぼせるなどの症状のある暑がりタイプの方。体力がなく疲れやすい方。
排尿障害(頻尿、夜尿症、残尿感)、むくみ、かゆみ、しびれ。

八味地黄丸:六味丸の強化版漢方薬 からだを温める効果

高齢者で下半身が冷える方。寒がりタイプの方。胃腸の弱い方には不向き。
夜間頻尿、腰痛、坐骨神経痛、冷え性、下半身の虚弱やむくみ、しびれ、耳鳴り。

牛車腎気丸:八味地黄丸の強化版 筋肉・骨に栄養を与え、水分代謝を良くする効果

八味地黄丸が効かない方。
下半身のしびれや強いむくみ、腰痛、フレイル(心身の活力低下)状態における筋肉維持。

城内病院でアンチエイジングに処方するおもな漢方薬

人参養栄湯:胃腸機能を改善して栄養を与える効果

体力・筋力がない方。疲れやすい方。精神的に落ち込み元気のない方。
アルツハイマー型認知症、フレイル(心身の活力低下)状態の倦怠感・意欲低下・精神不安、食欲不振、手足の冷え。

抑肝散:自律神経に働きかけ精神の高ぶりを抑える効果

体力が中等度の方。怒りっぽく興奮しやすい方。精神的に不安定な方。
イライラや緊張からくる心身の不調、不眠症、更年期障害。

抑肝散加陳皮半夏: 抑肝散に胃腸機能の改善効果を足した漢方薬

体力が中等度の方。怒りっぽく興奮しやすい方。胃腸虚弱の方。
イライラや緊張からくる心身の不調、神経症、不眠症、更年期障害。

加味逍遙散:「肝」の症状(のぼせやイライラ)や女性特有の症状に有効

体力が中等度以下の方。のぼせ感やイライラにある方。疲れやすい方。
更年期障害、月経不順、冷え症、肩こり、虚弱体質、不眠症。

補中益気湯:胃腸機能を改善して、病気に対する抵抗力を高める効果

胃腸虚弱の方。体力が落ちてぐったりしている方。疲れやすい方。
胃腸虚弱、全身の倦怠感、手足のだるさ、食欲不振、気力の低下。

六君子湯:胃腸の働きを高める効果

体力が中等度以下の方。胃腸虚弱の方。疲れやすい方。貧血性で手足が冷えやすい方。
胃腸虚弱、食欲不振、胃痛、胃もたれ、貧血性の手足の冷え症。

十全大補湯:全身の組織や器官に栄養分を与える効果

全身が疲労衰弱している方。栄養状態が悪い方。皮膚が乾燥している方。
胃腸虚弱、食欲不振、疲労倦怠感、貧血、皮膚の乾燥 手足の冷え症。

漢方薬でアンチエイジングするメリットとは?

  • 患者様の「証」や体質に合わせたオーダーメイドの漢方薬を処方できる。
  • 漢方薬は西洋医薬と比較すれば副作用が少ない。副作用がある薬はやめて体質や体力に合わせて違う漢方薬を処方できる。
  • 漢方薬の生薬自体にポリフェノールなどの抗酸化物質が多く含まれている。
  • 老化現象を「腎虚」として包括的に捉えることで、1つの漢方薬で複数の老化現象に効果が期待できる。
  • 老化現象を未病(発病には至らないものの軽い症状)と捉えて漢方薬で対処することで、早い段階で病気を予防することができる。

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